人と組織の劣化時代か?

 大阪での若い母親の育児放棄による2児の死亡事件は、死亡というより殺人容疑さえ考えられる深刻な事件である。この事件に限らず、昨今の事件、不祥事を知るにつけ、人と組織の「劣化」を感じてならない。
 仕事柄、ボクの世界は書籍・情報関係だが、最近、ある有名出版社の出した2冊の本でそれを痛感した。少し長くなるが、1冊は5千円近くする500ページ以上の分厚い本。著者も著名な学者である。なかなか充実した内容だが、1カ所だけ歴史的な公害病についての間違った記載が堂々と出ているではないか。担当編集者に尋ねると、その第一声が何と「原稿の分量が多いうえ、他の仕事も抱えていたので」。基本であるはずの「ご指摘ありがとうございます。著者に確認してお返事しますので、すみませんが数日お時間をいただけますか」が全くなしだった。
 もう1冊の翻訳本の担当者は、もっとひどかった。数値の大きな間違いを指摘したら、びっくり仰天。「翻訳者が間違ったのかと思います」ときた。「そんなら、編集者の仕事は何だ」です。
 人もひどかったが、会社組織の対応もひどかった。読者を「お客」とは思っていないみたいで、何の反応もなく10日以上も放置され、あんまりひどいので談判に行ったら、ボクの話はどこかで埋もれ、放置されていて責任者には回っていなかった。
 もちろん、会社とは一応の決着はつけたけれど、有能といわれる著者たちがなぜこんな間違いをしたのか尋ねても反論も含めて全く反応なしである。組織の劣化は人の劣化によるだけに、一層気がかりである。