ささやかな贅沢

妻は仲間たちと散策に出かけて留守。雑誌のゲラ校正に飽きた当方も散歩に出た。とある板塀に囲まれた古い家の門の前まで来ると、ちらほらと咲き始めたのも含め手ごろに切ったウメの枝がたくさん、「どうぞ、ご自由にお持ち帰りください」の添え書きと一緒に置かれてあった。「では、帰りに寄っていただいて帰ろう」と思い、付近を30分ほどぶらり。
そして帰り道、その門の前に戻ってみると、すでに残りの枝は数本。全部もらっては次の人に悪いかな、と2本いただいて家に入ると、一足先に戻っていた妻が「これ見て」と言う。こちらは、まだ固い蕾のサクラの枝と、羽根つきの羽根に付ける、あの黒い球として使うムクロジ(無患子)の実がたくさんなった枝を出すではないか。黒い種は半透明の種皮の中にあるという不思議なものだ。その種皮はサポニンをいっぱい含んでいて石鹸代わりになる。
二人してそれを見せ合い、決して無断で折ってきたものではないことや、「咲いてくれるかな」など言いあいながら、花瓶に差した。これで、しばらく楽しめそうである。二人とも、少なくともここだけは全くの一致点である。