ささやかな喜び

 あの日以来、なんともやりきれない日々が続いている。地震津波の後、原発でトラブル発生と聞いてすぐ、僕は1970年代の半ば、新聞記者として数人の仲間とチームで原発問題を取材し連載記事を書いたときのことを思い出した。全国各地で原発建設推進、誘致話が持ち上がった時期である。74年に米国で3000ページにものぼるラスムッセンレポートなるものが出された。ざっというと「100基の原発(当時、世界にあった原発の数)がある中で一度に100人以上が死ぬような大事故が発生する確率は何億年(研究者やジャーナリストなどにより10万年あるいは1億年とか10億年とも)に1回」、「隕石に当たって死ぬような確率」といった話で、それが、原発推進の声は政官財、また研究者の間に広がっていったのである。 僕は「科学的に、そんな先のことを言い切れるのか。どうしてそんなことが言えるのか」不思議というよりインチキ臭くて納得できず、それなりに調べたものだ。ECCS(緊急炉心冷却装置)は100パーセント間違いなく作動する、なんてことも聞かされた。そして、今日である。100パーセントが、どうして「想定外」になるのだろうか。
 そんな日々にあって、先月21日の「ささやかな贅沢」で紹介したサクラの枝の堅かった蕾が何と開花したではないか。淡いピンクの蕾から今は白い花を開いている。そう、春は必ず来てくれるのだ。(福士)