ニホンミツバチがスズメバチに襲われた。くやしいーッ

 通勤道のそばのサクラの木の洞に巣をつくっていたニホンミツバチを見るのが朝の楽しみだった。市役所などと交渉して看板を立てたり、僕の書いたミツバチ案内を事務所のデザイナーさんがうまくポスターにしてくれたので、ミツバチファンもうまれた。ときどき悪さをする人間もいたが、幸い深刻なものはなかった。
 それから2年余。一番心配していたことが起きた。天敵スズメバチの襲撃である。台風の過ぎた朝、前を通ると様子がおかしい。ハチの数が急に少なくなっていて、木の根元を見ると、数匹のキイロスズメバチの死骸があったのだ。ニホンミツバチは、無防備でスズメバチに襲われると全滅しかないセイヨウミツバチと違って、集団防衛力を持っている。数十匹単位ででっかいスズメバチに群がり体温を上げ、微妙な致死温度の違いで大きなスズメバチ熱死させるのだ。
 死んでいたスズメバチは、それでやっけたのだろう。また、周辺にミツバチの死骸は見当たらなかったので、無事に敵を撃退したのかなと一安心して出勤したものの、やはり心配。夜の帰り道、懐中電灯で見てみたが、特に異常はないようだった。
 しかし翌朝、じつは事態は一変していたのだ。ミツバチの姿は一匹もなく、時折、スズメバチが巣穴を出入りしているではないか。しかも、木の下にはミツバチの死骸もスズメバチのそれもない。ニホンミツバチたちはおそらく巣を放棄したのだろう。この時期に巣を捨てた彼らは生き残れるのだろうか。とても冬を越すだけの蜜を蓄えられるとは思えない。自然とは厳しいものである。残念でならない。