アフガニスタン復興支援の困難さを思う

 久しぶりに書きます。途切れずに書くというのは、大変なことですね。その大変さで考えさせられたのが、アフガニスタン復興支援、国際協力です。
 アフガンから帰ってきた畏友で悪友のS君から聞いた話です。彼は遺伝進化学の研究者で、JICAからの派遣で研究協力・技術指導に行っていたのですが、帰ってきた彼は「頑張ってきた」という感じではなく、とても落ち込んでいたのです。
 なにしろ治安が悪いため、厳重に警備された宿舎のホテルからガードマンと防弾ガラスに守られた車で研究施設まで往復するしかできない毎日は、野外研究と街に出掛けて現地の人たちとワイワイガヤガヤやるのが大好きな彼には、猛烈なストレスだったという。
 そして、それ以上に人間大好きな彼を落ち込ませたのは、この国の人々の心の荒廃ぶりだった。数十年にもわたって止むことなく続く戦争と戦乱、殺戮それによって生じた混乱と混迷、抑圧と貧困は、国民の心と社会に不信、猜疑心、裏切り、腐敗などを日常化させた。となると、はびこるのは汚職、賄賂、権益であり、ものを言うのはカネ。彼も研究指導していた施設で、仕事を頼んでいた相手から突然、「米軍の仕事のほうが賃金がいいから向こうに行く」と通告されたことがあったそうだ。
 彼は「ホテルと車の窓から見える埃だらけの街並みとはげ山ばかりの周囲の山々は、この国の人々の心の荒廃、傷と痛みを象徴しているみたいに思えた」と言ったけれど、お金と物の支援だけでは解決できそうにない、この心の傷を癒す支援と協力について考えさせられた。心にも緑と花を、である。
 中村哲さんのアフガンへのかかわりに、改めて学ばなければならないように思う。