「人生を整理する」ということ

 85歳になる先輩とは、もう15年の付き合いになる。その先輩が30年以上も前に、書いた本があることを別のことでネットを検索しているなかで初めて知った。早速、たいそうなプレミアのついたその本を購入して一気に読んだ。読後の感動と、何らかの形で紹介させてもらっていいだろうかという提案の手紙を出したら、先輩からすぐに電話が入った。本を探し、読んでくれたことをとても喜んでくれた後、先輩は「提案はありがたいけれど、僕はいま、自分の人生の整理をしているところなのです。本のことが紹介されたら、問い合わせなどで、その整理に差し障りが出るかもしれない。それだけは困るのです。わかってくださいね」と、いつものように優しく、しかし毅然と私に告げた。まだまだ元気だと思っていた方の強い心づもりを垣間見て、考えさせられた出来事となった。 
 一方、今年10月4日で100歳を迎える、あの日野原重明先生の側近からは、こんな話を聞いた。先生は盛大な記念会などはされないとのことで、震災のことがあるからですかとその側近氏に尋ねると「いえいえ、先生は『僕は120歳まで生きるのに途中の100歳にどれほどの意味があるのですか』と軽く言ってのけましたよ」。やっぱり、すごい方だ。
 それにしても、「老い」とはさまざまなものである。