話は転がるから面白い

 事務所で外部のデザイナーと大学研究室のホームページの作成の打ち合わせをしていた時のこと。話が一段落してデザイナーの彼が右腕関節のサポーターに触りながら「僕、テニスしないのですけどテニス肘という診断なんです」の一言で話は急展開となった。
 「投扇興」というのをご存じだろうか。枕に見立てた台の上に、これまた蝶に見立てた的を置き、それに向かって1.6メートル離れたところから扇を投げて、落とし方の優美さなど技(それぞれの技に点数が付く)を競う遊びである。いろいろと流派もあって、彼は、一つの流派の最高段位者であると同時に扇も含めて道具一式を自分で作ってしまうし、この「遊び」でもあり「競技」の普及にも努めている。その頑張りのせいで、肘に負担がかかっているようなのである。
 こうした遊びの概略とテニス肘の原因についての話の後、彼からクイズが出た。「この遊びはいつごろ生まれたでしょう」。落とし方に源氏物語54帖と同じ名前が付けられているというから相当古いのかなどと思いつつ、こちらもそれなりの古狸なので、平安時代は遊びといえば知っているのは貝殻合わせくらいだし、これは逆だな思い「江戸時代」と答えると当たり。聞くとなるほど、扇などを作る紙が庶民に普及するのは江戸時代中頃で、そのころ生まれ普及した遊びなんだそうだ。
 そして話は、私のようなガサツ人間には珍しいことばかりの文化的なほうに次々と楽しく広がっていったのである。       (福士)