井本元義くんの『第三詩集 回帰』

同期の井本元義くんが『第三詩集 回帰』を出した(福岡市・梓書院、2015年10月、1800円)。写真のように奇麗な表紙のカバー絵は彼の友人でデザイナー、建築オーガナイザーなどとして活躍した故塩川徹さん。本書「詩人たち」には、13回の医師、吉本哲郎さん(北九州市・熊手町クリニック院長)の、その塩川さんへの「鎮魂歌」もある。
「回帰」「散文詩」「詩人たち」「虜囚物語」で構成されていて、読みながら、詩的センスに欠ける当方には彼の世界のほんの一端が見えたような気がしているだけだが、「美しい色」と題する「あとがき」の一節「その色(少年のころ観たクールベの「追われる鹿」の背景の美しい色)を再び目にして僕は人生を初めて振り返る気になった。時には喜びもあったが、長い苦しい戦いの日々だった。怒りや屈辱を悲しみの涙で流したことも多かった。だが、ずっとこの色を心の奥底に探しながら、次の日の朝にこの色を求めて生きてきた気がした。」を読んで、もう少し彼のことがわかったように思えた。